結納は一般的に、男性側の家族が女性側の家族に「嫁入りの支度」として様々な品物を贈るといわれています。結納が終わった後は、今度は女性側から男性側に「これからよろしくお願いします」という意味合いを込めて、結納のお返しを贈る地域も少なくありません。

本来であれば結納のお返しは「御袴料（おんはかまりょう）」といって、袴を仕立てたり、袴料として現金を贈ったりしていましたが、現代では袴ではなく記念品に変わってきています。袴に相当するものとしてスーツを贈ったり、他にも時計や実用性の高いアイテムを贈ったりするのが一般的です。古式ゆかしい儀式を尊重しつつも、贈るものは実用的なものとなっているわけですね。

結納返しについては「お礼」という意味があり、地域によっては「お礼は結構ですよ」と結納返しを行わない地域もあります。その辺りは地域の風習や両家の考えを優先しながら決めるのがマナーです。

面白いことに結納のお返しは全国統一ではありません。先ほども少し触れたように、結納のお返しについては地域によって考えが異なります。たとえば関西や九州での結納品は豪華にすることに対し、関東では割と質素に行う「西高東低」の特色があるのです。

ただ結納返しについては、関西は金額の1割程度、関東は半返しという傾向が。これだと関東の負担が多いように感じられますが、これは関西や九州では男性側が圧倒的に格上だという文化から来ているためと考えられています。男性側を持ち上げる意味で、関西では女性の結納返しは控えめに行うのです。一方で関東の場合は、どちらが格上という基準はなく、両家はほぼ同格（男性側がわずかに上）という考えが根付いています。

結納のお返しの価格相場については先述した通りです。古くからの慣習に沿って行う場合は、関西や九州では結納の1割、関東では結納の半返しが基本となっています。ただし地域によっては結納のお返しを行わないところもあるので、風習を重んじる場合は、両家で話し合うことも必要です。中には結納のお返しがいらない代わりに、男性側からの結納に掛かる金額を減らすといった地域も見られます。男性からの結納が200万で、本来の結納返しが100万の場合、結納返しの100万がいらない代わりに、男性からの結納が100万になるといった感じです。

また結納のお返しは行うけど、当人たちで自由に行うという場合、価格相場は10万円前後が多い傾向にあります。高くても30万円未満で収まっているようなので、この相場を参考に結納のお返しにふさわしいアイテムを見つけましょう。

いざ結納のお返しを選ぼうと思っても、何を基準に選んだら良いのか迷ってしまう方は少なくありません。ここでは結納のお返しを選ぶ際に参考にしてほしいポイントを3つご紹介します。

長く大切に使えるものを選ぶ

結納のお返しとしては、30年後や40年後を見据えて長く使ってもらえるようなアイテムを選びたいところ。たとえば高級腕時計は長く大切に使えるものとして人気がある上、「二人で一緒に時を刻みましょう」という素敵な意味合いも込められています。他にもメンズ財布やメンズバッグなど、実用性の高いアイテムを検討してみましょう。

ビジネスで愛用してもらえるものを選ぶ

共働き世帯が増えたとはいえ、それでも家計の収入源を支えるのは男性がほとんど。いつまでも現役で頑張ってもらうために、ビジネスで愛用できるアイテムを贈る女性も増えてきています。先述したように昔の風習にもある「御袴料」に代わるスーツやコート、ネクタイ、タイピンなど贈るのも良いかもしれませんね。

現金+品物のセットでもOK

結納返しは御袴料と一緒に「結納返し一式セット」という品物を贈る地域も一部あります。きちんとした結納を行っていない場合は、このような結納返し一式セットを用意する必要はもちろんないため、一式セットに代わるものを贈るのも◎時計やスーツの他、肌身離さず身に付けられる指輪やネックレスという選択肢もありです。

結納に古くから伝わるしきたりやマナーがあるように、結納のお返しを贈る際にもしきたりやマナーはあるのでしょうか。実際のところ、結納のようなかっちりとしたマナーはないようですが、相手のご両親が同席する際は気をつけるべき点がいくつかあります。ここでは結納のお返しを贈る際のマナーやルールについて説明していきます。

結納のお返しはタイミングに注意

結納のお返しをするタイミングですが、近年では結納を簡略化する意味で、同時に交換することが多いようです。しかしやむを得ず後日に改めてお返しをする際は、なるべく早めにお返しをするのがベスト。結婚式の前までには済ませるようにしましょう。

訪問時にご両親が同席する場合は言葉遣いに注意

一般的には女性が男性の自宅を訪れて結納のお返しを渡します。その際に相手のご両親や、自分の両親が同席する場合は言葉遣いに気を付けましょう。「戻る」「捨てる」「切れる」「重ねる」などは、お祝い事では忌み言葉として縁起が悪いものといわれています。

結納のお返しはしない選択肢もあり

近年では結納のお返しをあえてしないカップルも増えています。お互いの両親を交えて、みんなでお返しをしないと決めたのなら無理にお返しをする必要はありません。ただし改まって結納のお返しをするのではなく、記念品のみ贈るというカップルもいますので、その場合は１万円から３万円程度の価格帯で探してみるのも良いでしょう。

結納のお返しに選んではいけないアイテムもいくつか存在します。「知らなかった」では済まないものもあるので、失敗しないためにも結納のお返しにふさわしくないNGアイテムを確認しておきましょう。

使ったらなくなるような消耗品

結納をお返しするなら、長く愛用してもらえるようなアイテムを贈るのが一般的です。そのため使ったらなくなってしまうような消耗品や食料品はおすすめできません。「消える」「なくなる」という意味もあるため、今回のようなお祝い事ではとくに避けるようにしましょう。

男性側よりも高価な品物

もらった結納品よりも高価な品物をお返しとして贈るのもNG。張り切る気持ちは分かりますが、これでは男性側の立場がなくなってしまいます。男女平等の世の中とはいえ、親世代はまだまだ「男性優位」の考えの人が多いため、相手の男性よりも目立つ行為は控えましょう。

忌み言葉を含む品物

包丁やナイフのような「切れる品物」、ワイングラスのような「割れる品物」などは忌み言葉を含むため、避けるのが無難です。忌み言葉ではありませんが緑茶＝弔事に用いられるため、こちらも縁起が悪いものとされています。相手が忌み言葉を気にしなくても、両親が気にするケースが多いため、よほど贈りたい理由がない限りは止めておきましょう。